日常のエッセイ

noyau:ノワイヨはフランス語の『種(たね)』。 私にとって おいしいものは 種から生まれたものがほとんどです。
光と水と空気にふれあいながら ノワイヨは芽を出し、葉をひろげ、根をはりめぐらせて、花を咲かせ、実をつける。
そしてまた種へと、シンプルで美しい時間をゆっくりと静かに過ごしていきます。 その自然の流れのどこかを 私は おいしく頂いて、
そのたびに目をとじる。 植物にもらった小さなしあわせをたくさん、 おぼえておくために。




冬のモンサンミッシェルは静かな時間を過ごせます。
シーズンになるとたどり着くまでは渋滞、
中も混雑といった状況になるそうです。

2006.1.5




四方からなる美しい回廊に囲まれた中庭は
小さな薬草園としてハーブが育てられていたそうです。
その奥に菜食の食堂があり、そこでは食事中
一切の私語が 禁じられ、塩がほしいときも
ジャスチャーで 伝えてなければ ならなかったといいます。
“食事は静かな場所で”というのは
私も大切に考えていて、フレデリックパントリーの
ランチの時間がとても理想的な落ち着きを持っていると
いつもうれしくなっていました。おいしいものを
食べる時間を大事にするお客様のお陰です。



12
 ● パリの旅[氈n モン サン ミッシェル修道院


パリからバスで往復約10時間。ノルマンディとブルターニュのあいだに位置する
サンマロ湾に幻のように浮かび上がる修道院、
「モン サン ミッシェル Mont-Saint-Michel
」を訪ねることができました。
ここは湾とともに 1979年、ユネスコの世界文化遺産に登録されています。

サンマロ湾といえば、塩の満ち引きが激しいところとしても知られています。
満ち潮のとき、モンサンミッシェルの姿は海に浮かぶ修道院に見えるのでしょう。
最も大きい潮が押し寄せるのは、満月と新月の28-36時間後といわれていて、
このとき、沖合い18kmまで引いた潮が、猛スピードで押し寄せてくるそうです。
道がつくられる前、昔は多くの巡礼者が潮に飲まれて命を落としたという
言い伝えもあります。 かつては巡礼者たちが命がけで目指した場所へ、いまは世界中から
観光客がたえることなく訪れ、その壮大さと神秘で当時と変わらぬ感動を受けているのです。
歴史のあるものに触れると、そのときの人々の深い精神性や信仰について
考えさせられます。物があふれるようになった現代には思いつかないような
大切なものを、モンサンミッシェルにたどり着くことで手にしていたのでしょう。

「大天使ミカエル」をフランス語読みで「サン ミッシェル」といいます。
モンサンミッシェルはその名のとおり 大天使ミカエルを崇め敬う建物でもあり、
黄金色のミカエル像がこの修道院から突き出た鐘塔の先に立っていました。
来世への不安を抱えて生きていた中世の人々にとってミカエルは、死者を導き、
最後の審判を 迎えた日の魂を癒すとされていたのです。
私がミカエルについてはじめて知ったのは、ハーブについて調べものをしているときでした。
ヨーロッパで疫病が流行し多くの死者が出た時代にミカエルが
アンジェリカ(ヨーロッパトウキ)を手に束ねて夢に出てきたという神話があります。
このハーブを薬草に用いることでたくさんの命が救われました。
アンジェリカの語源はエンジェル、学名のラテン語は「最高の天使」です。
モンサンミッシェルが誕生することになったのも、708年アヴランシュ司教オベールが
夢のなかで大天使ミカエルから「この地に修道院を建てよ」とのお告げを受けたため、
ここに礼拝堂をつくったのがはじまりなのだそう。
ハーブと聖書には深いつながりがあるので、信仰者ではありませんが聖書について
書籍などで調べることがよくあるのでミカエルという名は知っていましたが
はっきりと“天使”という感覚でとらえたのは、友人たちが天使の描かれた
美しいカードからメッセージを受け取り自分をみつめるという
ヒーリングをはじめてからでしょう。 カードの中に見つけたミカエル、
私は思いこみで女性であるとイメージしていたので 剣を持った勇ましい男性だったことに
とても驚きました。 キリスト教関連の書物にも同じ様な姿で描かれています。

この修道院はほかの修道院とはちがう特徴的なことがいくつかあるそうです。
一般に修道院といえば平屋ですが、この修道院は3階建て。
狭い面積をうまく利用するため 1階、2階は岩山を包みこむように建設され、
階を重ねるごとに軽くなる構造になっています。
また、ゴシック、ノルマン、フランボアイヤンという異なる建築様式が融合しているのも
独自のスタイル なのだそう。


修道院に興味を持ち始めたのはハーブとの関わりが深くなった頃、
もう10年以上前になります。 ハーブは紀元前から人々の心身にさまざまな影響を
与えてきた植物ですが その歴史について探るたび、中世の頃の修道院の話が見つかります。
私が主宰しているノワイヨのハーブ講座のテキストの表紙は14世紀頃、修道院で
修道士が手書きで写本した薬草書の写しです。印刷という技術のない時代、
修道士の手でこの貴重な薬草の使われ方が手渡されてきました。

中世のドイツの修道院の話も印象的でした。当時、修道院へ入る娘たちは
一度そこへ入ったら生涯、親と会うことも、手紙を書くことも許されませんでした。
家族のためにひたすら祈る日々を送る、それがお役目となるのです。
ただひとつだけ、クリスマスが近づくと毎年 焼くお菓子だけが
家族の待つ家へ送ることができたのです。クリスマスの日に届くそのお菓子は
親たちにとって娘が生きているということを知る唯一の手だてでした。
「レーヴェクーヘン=命のお菓子」という名のビスケットです。

日本でも有名になったサンタマリアノヴェッラはいまも薬局としてフィレンツェに
存在しています。古い礼拝堂を改装したという店内。 世界最古の薬局といわれています。
もともとはドメニコ修道会の薬局で、修道士たちは13世紀半ばから薬草を調合して
病人の治療をしていたそうです。公式になったのは 1612年のこと。
現在は石けんや香水、リキュール、蜂蜜、ハーブテーなどを売るショップとして
日本でも銀座、日本橋、京都にあるほど身近にになりました。
ローズウォーターの大きなビンとアーモンド石けん(これはフィレンツエの街が舞台となった
小説ハンニバルにも登場しているほど有名)が好きで、銀座に行けば立ち寄るお店です。

修道院の薬局や修道院の写本室にとても惹かれます。菜食の多かった修道院の食堂にも。
これらは私が誰かに伝えたいことの もとになっているような気がします。
モンサンミッシェル修道院を訪ねることで、私の使命を確認することができました。

*モンサンミッシェルへは「マイバス」という日本人向け観光会社のバスツアーで
行きました。乗ってしまえば連れて行ってもらえるという安心感と
日本語ガイドさん同行により詳しい説明が聞けるというメリットがあります。
食事付きというのがもう一つでしたが この日はそんなことは忘れられるほど
素晴らしい一日を過ごすことができました。


【 パリの旅
 】2006年元旦から10日間、2度目のパリにでかけてきました。
その思い出を少しずつ綴っていこうと思います。


ひそかにファンが多い「チリ」。
映画ショコラを思い出す、辛いチョコレートです。
そのほか、ゲランドの塩入りや、ジャスミン茶入り、
スパイス入りなどユニークなチョレートもあります。



2005.9.19
ジャンルーカさんと奥様。ジャンルーカさんは
とてもキラキラした素敵な方でした。




ローストしただけのカカオ豆もまわってきました。
強い苦みとカリカリの歯ごたえ。
コーヒー豆より苦いと思います。


11
 ● チョコレートレッスン


フレデリックパントリーがオープンしたときからお取り扱いさせていただいている
イタリア「ドモーリ
DOMORI」のチョコレートたち。
はじめて出会ったときから、その箱から伝わってくる特別な空気と
いままでのチョコレートとは かけ離れた概念を持つ味に強く惹かれ続けています。
ずっと好きなものを探すのはとても難しいことだと思うのですが、
私は憑いているみたい、ずっと好きでいられるものは いつも 向こうからやってきます。

9月中旬、東京でドモーリ創始者であるジャンルーカ・フランゾーニ氏による
チョコレートレッスンがおこなわれ、私もわくわくしながら参加してきました。
その中身を少し、お伝えしたいと思います。

カカオの起源について、遺伝子は数万年前にさかのぼるといわれていて
地域としてはアマゾン、ヴェネズエラ、アンデス、ガテマラ地帯の4つの説が
考えられているそうです。アマゾンの場合には1万年〜1万5千年も前に人の手による
交配から生まれたと伝えられています。

15世紀頃、はじめは特殊な飲み物として存在し、17世紀にスペイン王に愛されたのが
きっかけとなり世界へ広まりました。

カカオにはさまざまな品種があり遺伝子がちがえば香りや触感、色なども異なります。
また、同じ品種であっても育つ環境、つまり産地によってもちがいがあるのです。
現在、世界には1万3千種以上のカカオが存在していますが、いい品種というのは
とても少ないのだそう。
「約500種もの芳香成分をもつ豊かな植物、カカオは極上のワインやお茶に匹敵する」
と、ドモーリ社は考えており、香り豊かな豆アロマティック・カカオの原種再生に
カカオを育てることから商品として製造すまでを一貫して取り組み
チョコレートの品質を高めています。
世界で収穫され出回っているカカオの約92%がフォラステロ種、
約2%がナショナル種。約5%が質が高く芳香豊かなトリニタリオ種。
そして、もっとも貴重で香り高い品種がわずか0.01%未満というクリオーロ種。
この希少価値の高いクリオーロ種からドモーリチョコレートは さらに
より香りが強く、苦みや酸味の少ないカカオが厳選されます。
ドモーリ社のチョコレートの特徴でもある原材料について、
カカオバターは豆に含まれている以上加えず、ミルクやオイルなども加えずに
つくられます。カカオ本来の芳香を失われないようつくられたカカオマスは
すべてカカオ豆の成分のみでできています。

ジャンルーカさんのように、遺伝子レベルでカカオを研究している人は
世界的にみても珍しいかもしれません。他にいないかもしれません。
100%カカオの商品を完成させたのも世界初といわれています。
カカオも植物なので、昔は薬として使われていました。
私も植物療法の中にもっとカカオをとりいれてみたいとかき立てられた
チョコレートレッスンでした。

お話の途中で、品種や発酵の度合いなどがちがう
チョコレート5種の 食べくらべもしました。イタリアのブランデーといっしょに。
熱を帯びた甘いバナナやヘーゼルナッツの香りとたとえられる「エズメラルダ」や、
シナモンや木材、ベリーの香りといわれる「カレネーロ・スーペリオール」など
どれもアロマを意識して食べるとワインのようにたのしくなってくる。

ドモーリ社のチョコのネーミングは木や街の名をもらうのだそうです。

最後にドモーリ社のクーベルチュールでつくられた
ムース・オ・ショコラとタルトレット・オショコラをいただいて、おしまいです。

一般のチョコレートの原材料表示を見てみるとわかるようにまず砂糖の量が多いこと
(原材料は多い順に書かれています)に驚きます。ふだんのキッチンに白砂糖がない私は、
ふつうのチョコレートを食べると 甘すぎて頭が痛くなります。
カカオの香りも、まったくしないのです。
いつも食べていれば気がつかないのかもしれません。
植物油脂や乳化剤、香料までもが 使われているものもあります。
「ポリフェノール」がブームになり、
チョコレートを健康のために食べる人もいるようですが、
こういったチョコレートを選んだら砂糖や添加物の害を心配をしてみてください。
どの食べものにも言えることですが、
カラダのためにたべるのでしたら、ぜひ、「ほんもの」を手にしてほしいと思います。
ドモーリ社のチョコレートの原材料はとてもシンプルです。

100%カカオの「プーロ」は苦いですか?と訊かれることが多いのですが、
もちろん、甘くはありません。苦いと感じるかどうかは、そのときの体調や
その人のふだんの砂糖のとりかたによってもちがってくるでしょう。
私は疲れているときは、とても苦く感じます。
お客様の中には、プーロだけを買い占めていく方もいらっしゃいます。
クセになるのかもしれません。お菓子づくりにも良質のカカオマスとしても使えます。
ちょっと贅沢ですが、気合いの入ったチョコレート菓子ができあがります。





2005.8.14
海水浴禁止の砂浜だから、夏だというのに
静かな海の時間を過ごすことができる。





上:松ぼっくりの赤ちゃん。生まれたばかりです。
下:松ぼっくりの
子ども。まだ青いね。
海岸には松の木がいっぱい。


10
 ● 何もしない時間


お盆休みをいただきました。とっても短いヴァカンスをどう過ごそうか考えた結果、
何もしないことにしました。 何もしない、どこにも行かない、計画しない。

何もしないためにも、仕度が必要で、
食料やおやつの買い出し、前もってのお掃除、読みたい本の調達に忙しい流れ。

だけど、家にいると何かしてしまうものです。

夜、ベッドに入ってから眠るまでの時間を小さな灯りで本を読む習慣があります。
そのとき、窓を少しあけておく。私の寝室には虫や鳥の声に交わって
遠くに波の音がきこえるのです。
そうだ、眠るときと同じ音を聞きに行こう。枕がわりに大きなタオルを持って
車で3〜4分の海へ。やっぱり、気持ちいい。すぐそばで聞く海の音は、寝室で
聞くのとはちがって、やさしさや静けさは感じない。とても力強くて大きな音。
両手、両足を広げて寝ころび、しばしお昼寝をしました。
いま、病気で入院生活している人たちがここへ来ることができたらいいのに。
治癒力が高まりそうなこの時間を、届けることができたらいいのに。

海にはたくさんの「気」のエネルギーが充満しています。
森林浴が体にいいことはよく知られていて、「森林療法」もあるほどです。
樹木が生い茂った森の中を散歩することで元気を取り戻すというものです。
風邪や疲労、不眠、うつ症状、自律神経失調症などにとくによいとされています。
森林に充満ている「気」のエネルギーが癒してくれるのでしょう。
海にも同じ力があるのです。決して裸で泳ぐ海水浴ではなく
静かに海の音と空気に触れることです。

そんなすばらしい場所で空を吸い込むように呼吸すると、体の中に
何かが入ってくるのがわかります。おいしい空気と自然の香り。
何もしない時間の大切さをかみしめました。
何もしない時間は一日10分でもよいのです。自分が静まる時間。
音楽をきく、 本を読むなどリラックスする方法は人によりさまざまですが、
テレビを見ながら過ごすのはおすすめできません。私はニュースを見ません。
いやな情報や映像を見ているときの重苦しい心の動きを感じませんか。
心が疲れている人を見かけたら、ニュース断食をすすめてあげることにしています。
妊婦さんにもそう言います。


お昼寝のあとは、堤防を散歩。海沿いにはたくさんの松の木が。
松ぼっくりの赤ちゃんを見つけました。

松の針葉と球果から抽出した精油「パイン」について

pinus sylvestris
気管支炎、疲労、膀胱炎、殺菌消毒、血液循環促進、ノミ撃退

この壮大な針葉樹には80もの種類があり精油となっているのははスコットランド松と
ノルウェー松が大半のようです。エジプト、ギリシャなどの古代文明においても
治療にもちいられるほか宗教的な儀式とも深い結びつきがありました。
気管支炎、結核、肺炎のような肺の感染症に役立っていたそうです。
すっきりする香りからもわかるように、心をリフレッシュさせてくれます。
気分が衰弱してしまったときに使いたい精油のひとつです。


.2
2005.7.2
太陽のおかげで桃も甘くなって、
お茶もいい香りに。


9 ● 太陽出し、太陽熟し

2階のデッキは太陽がさんさんと降りそそぐ、我が家唯一の陽あたりのいい場所。
陽あたりのいい部屋はあまり好きではないのですが、
木陰のような明るさの部屋から陽当たりのいい場所を眺めるのが気持ちいい。
昔の日本家屋みたいに、家の中には太陽の光は入らないけれど、気持ちいい。

暑い日は、この陽あたり良好のデッキは太陽だしと太陽熟し専用に。
先日、山のようにいただいた桃がまだ若かったので
太陽の光をあてて熟させます。ほんとうなら、木になったまま熟したものが美味。
でも、ほとんどのフルーツが熟す前に収穫されてしまうようです。
熟してからお店に並んだのでは、あっというまに腐ってしまうからでしょう。
だから、家で育てて収穫したフルーツはなんでもおいしいのですね。
プラムもブルーベリーもブラックベリーも白ぶどうも
我が家の土と太陽の味が詰まっています。実のなる木は宝物です。

太陽だししているのは、大好きな「CHA YUAN」のお茶。
フランス,リヨンのお茶専門店で、泉区にあるノートルシャンブルが輸入しています。
いい香りのフレーバーティーを楽しむならここのと決めています。
わざとらしさのまったくない、自然の香りがするから。
CHA YUANのマダムに お会いしたことはないけれど、
何かとても大切にしているものを持っている方なのだと 思います。そんな味がする。
そして、そのお茶を大切にとどけてくれる友人でもあるノートルシャンブルの
オーナーjunkoちゃんにとびっきりの水だし法をおしえてもらいました。
太陽の力をかりて、ゆっくりゆっくり抽出するのです。
つくりかたはとてもカンタン。茶葉を容器に入れ、おいしい水を注ぐだけ。
1時間以内ですばらしい香りのお茶のできあがり。
ただの水だしよりも フルーツや花の香りが わくわく、しあわせそう。
だから、それをいただく私も しあわせな気分に。

太陽の光にはたくさんのエネルギーが含まれています。
植物がそうであるように、人間も水と空気、そして太陽の光が
なければ生きることが
できません。身体だけでなく、心にもエネルギーを与えてくれるます。
特に早起きして朝の光を浴びることは さまざまな「バランス」を
とりもどすのに 大きく役立ちます。
身体が動かせない病気の方、うつ病の方には、ひなたぼっこをおすすめします。

だけど、太陽にあたりすぎもよくありません。
日焼けしすぎたときは 紅茶風呂に入りましょう。紅茶の葉1/3cupに沸騰した湯2cupを
注ぎ10分抽出し、濾してからお風呂に入れます。水風呂がより効果的。
タンニンが焼けた肌を癒してくれます。
ほかにタンニンを含むハーブは、ウイッチヘーゼル、エルダーフラワー、シナモン、
セントジョンズワート、タイム、ヒース、マローブルー、ラズベリーリーフ、
ラベンダー、ローズなど。
タンニンという成分は100度で抽出できるものなので、熱いお茶をつくってから
お風呂に入れてください。茶葉そのままを40度前後のお風呂にいれても
タンニン効果はあまり期待できません。

タンニンのうれしい効果をもうひとつ、「ゆるんだ組織をひきあげる」
つまり、たるんだお肌を引き締めてくれる!のです。


*太陽だしをCHA YUANのお茶で試したい方はノートルシャンブルの通販へ。
http://www.cotemidi.com



2005.6.1
東京へは回数券を利用しています。
ほんの少ししか割引にならないの。


8  ● 東京通学2年目

36歳になりました。
勉強はもっぱら独学を選択してきた私がこの年齢になってはじめて学校へ通うことを
すっと選んだのは、やはり父のことが影響のようです。

私の父はとても無口で厳しくて、こわいけれども、あたたかくて
困っているときは、いつてもそっと手をさしのべてくれるやさしい人でした。
趣味を持つこともなく、ひたすら家と仕事の往復で
おいしいものを食べたり、旅行にでかけたりなんてすることのない父。
家族のために仕事をしてきた人です。
だから定年退職したら、温泉に連れて行きたいなとか、おいしいお店を
案内したいとか親孝行をたくさん、たくさん、とっておいたのです。
しかし、父は 一昨年、58歳で亡くなりました。
まだ、夢をみているような気分。いままでの分も長い一人旅へ出掛けて
なかなか帰ってこないのだと自分にいい聞かせています。
もう会えないことを納得しようとすると、いてもたってもいられなくなる。
2年が過ぎても悲しみはまったく癒えません。むしろ、強くなっている気さえします。

父の命をうばったのは、ガンでした。現代医学ではどうすることもできない
病なのだから、自然療法や代替医療をうまくとりいれて
治療していくことをのぞんでいました。アメリカから日本では手に入らない
ハーブを輸入したり、食べたいものを身体の負担にならない
材料でアレンジして手づくりしたものを運んだり。
意味を持たない手術も反対しました。
ところが、担当医はそんな私たちの話しには耳をかしません。
胃だけではなくほかの2,3の臓器も切除するという医師に
父の場合かなり進行していましたので「完全にガンを取り除くことができないのなら
そんなにたくさんの臓器をとらなくても。いま苦しい出血の状態を
救うために胃だけの切除でもよいのではないですか」と訊ねました。
すると医者は「あなたたちは、お父さんに何もせずに見ていられるのか!」と
どなります。そして、「あなたは医療関係者なのか?」と。
医療関係者じゃなくとも、たくさんのデータを調べ
本を読みあさり、何がいちばんよい方法であるかを
医者のあなたよりも父の命の大切さを考えているわよ!と心の中で
叫んびました。けれども命を預けているようなものだから下手なこともいえない恐ろしさで
だまってしまいました。大粒の涙が流れただけです。
医者を説得できない悔しさと、もうすぐ来るであろう父との別れへの悲しさで
母と妹と静かに泣きました。何も知らない父の前では楽しくふるまう私たちが
一斉に流した最初で最後の涙です。
父はそのときすでに動くことができず、出血もひどいため他の病院へ移ることさえ
選択できなかったのが残念でなりません。
結局、大手術はおこなわれ、寝たきりですが3ヶ月だけ自宅へ帰ることができました。
仕事場から病院へ直行し、そのまま入院してしまったので
生きているうちに家の空気にふれられたことが私たちの大きな思い出となりました。
退院したのがちょうど年末だったので、いっしょに初詣へ出掛けることも
できました。父はダルマを買い、片目を入れました。
何を願ったのだろう。何が叶ったら、もう片方の目を入れるつもりだったのだろう。

私が旅先のパリから帰る直前に 再入院。空港で夫に知らされました。
その後、病室から遠くに見える桜並木を母とふたりで眺め終えたころ、
すぐにこの世を去りました。突然の不調からたった半年後のことでした。
いまも片目の父のダルマは神棚に。神様は父の願いを知っているのでしょうか。

医者とのやりとりで、植物療法の知識だけでは話し合いができない
自然療法側の私にも医学の知識が必要であることを思い知らされたのです。

父を助けられなかったことがきっかけとなり、東京通学がはじまりました。
いまは、植物療法(メディカルハーブ、ハーブ療法)に加えて
代替医療、基礎医学、基礎科学、栄養学を 学んでいます。
家族を助けたいと必死に願うすべての人の心を 私が微力でも救うことができたらと夢見て。


栄養学については、入院中の父の食事に大きな疑問を感じたためです。
もうすぐ、命がなくなるかもしれないという人に なぜ、病院は
添加物入りの大量生産ゼリーや、冷凍の野菜を食べさせるのか。
そんなものがどんなエネルギーに替わるというのか、
家でならそんな不自然なものは食べないのに…。という怒りがいまもおさまらないのです。

私にできることが、きっとあるはず。


 季節のコレクション  





春菊の花
しゅんぎくの花はごらんになったことがありますか? 
春の菊という名前だけあって、その花は鮮やかな黄色、菊そのものです。








じゃがいもの家族

少し、早い収穫です。一株だけ掘り起こしてみました。いちばん小さな子は
ビー玉くらいの小粒。大きな子は握りこぶし大。
誰一人、同じ大きさでない楽しいじゃがいも家族です。
じゃがいもは、 “じゃがいもの芽”から発芽しひとつの株となり、
土の中で家族をつくります。植えるときは、親となるじゃがいも一ヶを
芽ごとにカットして。実でもあり、種でもあるじゃがいも。
栄養たっぷりなのもうなずけます。








2005.5.15

ベルとはジュースだけにはとどまらず、
おやつも奪い合いします。


母猫のボスは本が大好き。


7 ● モーニングジュースとねこ

少しだけ体調に難ありの私は、朝ごはんを用意してあげることができません。
だけど、夫は何もいわず、いつも知らないうちに、 すーっとベッドからいなくなり、
母屋で父母と3人で朝食をとる毎日。 私は悪いお嫁さんです。
朝起きてすぐに、食事をとることもできないため、
つい、このあいだまで お姫様のような朝を迎えていました。

目が覚めると、ベッドルームのテーブルには
夫がつくるジュースが置いてあるのです。 毎朝、せっせと、運んでくれている。

親戚が育てているオーガニックのおいしいにんじんのジュースや、
バナナジュース、バナナきなこミルク、アボガドミルクなどなど、
レパートリーも豊富です。猫のベルくんと、うばいあうことも、しばしば。


そのベルくんも、先日 病気になっていまい 弱っていました。
虚勢した雄猫によくある膀胱炎です。
夜間に救急でかけこんだので、獣医さんひとりしかおらず、
尿にくだを入れるときは大騒ぎ。私も必死でベルくんを押さえ込みました。
小さなからだで必死で抵抗するベルくん。細い手足を力ずくで押さえ込むのは
ほんとうにつらいことでした。でも、病気になったのは私たちのせい。
飼い猫であることが幸せか不幸せか、心の中の論争は終わることはないでしょう。

8年前、妊娠していた母猫のボスが予定日を過ぎても生まれなくて心配になり
レントゲンを とっていただいたら赤ちゃんがお腹の中で死にそうになっていたことを
思い出しました。 獣医さんから「母胎優先でいいですね」と確認をされ
「はい」と答えた私たち。 帝王切開の手術がはじまり、無事を祈った時間の長かったこと。
麻酔で意識がないはずの母猫ボスが聞いたこともない低音の声で「ウーウー」と
うなりつづけていました。一時間後、「ピーピー」ときこえてきた!
てのひらにちょこんとのるくらいの小さな小さな命が生まれたのです。
その子がベルくん。一匹しかお腹にいなかったそうです。
足がのびきっていて命は瀬戸際でしたが
看護婦さんが必死で人工呼吸をしてくれて。みごと私たちと暮らすことになったのです。

人もねこも同じ動物です。
私はたべものやハーブなど自然のもので体調をととのえているけれど、
ねこたちに関しては病院に頼りがちです。せめて、ごはんだけでも
自然のものをと考え、いろいろ探しているのですが満足できるものには
まだ出会えていません。だって、このあいだの膀胱炎は
オーガニックの高級エサなるものに替えたとたんにおこったのですから。
引き金になったようです。

私がオーガニックという言葉に、いつのまにか依存しなくなったのは
それが必ずしも「おいしいもの」や「すばらしいもの」とは限らないことを
経験してきたから。もっと感覚(センス)で選択する力がつきました。
すべての消費者がその力を磨くことができたらいいのにと思っています。

モーニングジュースと家族と友人とお客様のおかげで、私はだいぶ元気になりました。







2004.10.30
切り倒された木はまだ横たわっています。
その木を知る人々の心も傷つきました。

6  ● 伐採された、クルミの木

家の前の空き地にひっそりと生きていたクルミの木が突然、伐採されてしまいました。
誰がそんな命令をくだしたの! 怒りと悔しさでいっぱいです。

空き地の隣りにひとりで暮らしているおばあさんが
毎年、そのクルミをひろい、孫がくる日にクルミもちをつくります。
そんな幸せのおすそわけを私たちもいただいていました。
ささやかな季節の出来事が、もう、なくなってしまうんだ。

そういえば、この夏に 空き地でひとりぼんやりしていたときのこと。
私はクルミの木によばれたんだと思います。
近づいていくと、青い実がたくさん。
いくつか、パッカリとひらいてクルミをのぞかせているのです。
クルミってこんなふうに生まれてくるんだ!
落ちているところしか見たことのなかった私はとても感動しました。
何年もここで暮らしているのに、遠くで眺めてばかりだったから
実がなっているのが見えなかったのです。
記念に落ちる前のクルミを一粒いただいて、
にこにこしながら家にもどり、父のお仏壇にのせました。

今思えば、
クルミの木は私をよんで、最後の姿をみせてくれたのだ と信じています。

木も生きているのだということを知らないはずはないだろうに。
どうして、簡単にその命を切り倒してしまうのでしょうか。

一般に、栽培種のクルミは殻が割りやすく大きめ。
殻がかたく、小ぶりのものは野生だというのですから、
あの子も野生のクルミでした。そうなると、悔しさは増す一方です。

クルミの木は、最初の収穫までに6〜8年。
手入れのよい木は1世紀近く実をつけ続けるといわれています。
あとからやってきた人間の都合で植物はどれほど傷ついていることか。

二階のリビングから見る外の景色もすっかり殺風景になりました。
姿はなくなりましたが、忘れないようにしよう。
風にふかれて、ゆらゆらしていたクルミの木のこと。








2004.10.25

パン ド コナ
横浜の青葉区みたけ台にお店があるが、
渋谷駅にくっついている東急フードショーにも
小さなスペースで出店している。

追記:残念なことに、2005年2月いっぱいで
渋谷のお店はなくなりました。これからは
本店からお取り寄せですね。


5  ● 好きなパンやさん「パン ド コナ」

仙台にはおいしいパンやさんがないという声をよくききます。
“おいしい”という感覚は“かわいい”とおんなじで、実に人それぞれ。
あの人がおいしいといっても、私にはまずいということ、よくあります。
おいしいと評判のお店に行ったはずのに、ハズレだったことも何度も。
いつからか、自分の直感を信じることが、私のおいしいもの選びの教訓になりました。
そうしているうちに、お店に入る前、つまり、店構えや看板を見るだけで
アタリかハズレかがわかったり、雑誌の記事をみただけでもわかったり。
本能がものすごい勢いで目覚めたかのようです。

もうひとつの目でたべものが見られます。


スーパーやコンビニに並ぶメーカーの機械パンばかりたべている人には
職人さんがつくる ハード系のパンはまずいものなのかもしれません。
全粒粉やライ麦の入ったカンパーニュなんて、論外でしょう。
逆にそういった職人パンばかりをたべている人にはメーカーの機械パンは
ふんわり、へんな味、パンじゃないといった具合に。
私は後者ですが、どちらが正しいかという問題ではありません。
少し前まで機械パンは まちがいだと思っていましたが、
どこかの国ではこの日本の機械パンがとても評価されているそうです。
そう知ってから、ほんものとは何かを問うことをやめました。
私が、おいしくてしあわせになるのなら、それでいいのです。

パンドコナのパンが好きです。
下の写真はパンではありませんが、木の実やナッツがぎっしり入った『チロル』。

季節限定の品に出会うことができました。
カルダモンの香りが遠慮なしにきいていて、しあわせ。
ぎっしりなので一口で満足するのですが、止まらなくなります。
そんな、魔法をもっているたべものがとても愛おしいです。
バゲットもやさしい味。誰にも嫌われないあたたかさを持っています。

ずいぶん前から好きだったのですが、これも、もうひとつの目で
選んだおいしさでした。でも、先日、雑誌「料理王国」2004.9月号の
パンドコナの記事をよんで、どうりで!やっぱり!と、納得。

「料理王国」の記事より少し抜粋させていただきますと…
〜パン ド コナのご主人はもとCMプロデューサー。
本当の豊かさとは何かを考える中、天然酵母パンと出会い
35歳でパンの道へ進んだそうです。当時(11年前)は天然酵母といえば
「体にいい」ともてはやされる傾向だったが、ご主人が惹かれたのは「おししさと香り」。
そして、「人間の都合で操作されるのとは無関係にあるところ」。
ほぼ独学で自分の足で食べ歩き、パンの歴史をたどり、
誰かの真似もせず、自分自身を込めたパンづくりをしているのです〜

自然のものへ惹かれ方や、進む道の学び方が私と同じでした。
私もオーガニックやナチュラルに惹かれたのは体にいいからではなく
美食だから。それらについて学ぶ方法も、やはり 歴史や情報をさぐる独学と
自然そのもがおしえてくれること。
失礼じゃなければうれしいのですが、考え方が似ているパンだから
ひとめぼれしたんですね。
たべものを見る目がある。と、我ながら感心。









2004.8.13

プチトマトがこんなふうになっていることを
知らない人もいるようです。
お店に飾っておいたら、とてもよろこばれました。
「これ、ほんもの?」というお声も。
たべものをみて、感動している人の姿をみるのが
私の なによりのたのしみです。うれしくなります。

4 ● プチトマトのピクルス、失敗作

プチトマトがたくさん実をつけたので、ピクルスにでもしておこうと
軽い気持ちではじめたのが失敗のもと。
いつものように、そのときあるものでつくりました。
ワインビネガーを切らしていたので、米酢で。
スィートバジルは、あとでペーストを大量につくるので、
もったいないからと
小さな小さな葉をつけるグリークバジルで。
あとは、にんにく。
2日後がたべごろと、わくわくしていたのに。失敗作のできあがり。
米酢のピクルスが私の好みに合いませんでした。
ただ、ただ、おいしくないのです。
きっと、お口にあう人もいらっしゃるとは思いますが
私はダメでした。好きじゃない味をたべてしまうと急に目の前が
まっくらになります。自分でつくったものなら、なおさらのこと。
後日、夫の母がカレーに入れて料理してくれていました。
やさしい。でも、やっぱり酸っぱすぎておいしくない、私にとっては。

トマトはびっくりするほどたくさんの種類があります。
以前、友人の家具職人さんのトマトコレクションをいただきました。
5種くらいだっと思いますが、 色、大きさ、形、味、すべてがちがうのです。
中でもおどろいたのが、緑色のトマト。
ただのグリーントマトではなく、きゅうりのような味と食感なのです。
パリパリと音がするほど少し固めの実。
スライスしてサラダでいただきましたが、いつものトマトにはない おもしろさ。
トマトコレクションだなんて、素敵なご趣味だなぁと感動したものです。
外国のとある種やさんのカタログだけでも400種はあるときいたことがあります。
実際はもっと存在すると思います。
品種改良がおこなわれた結果なのでしょうからナチュラリストにとっては
眉間にしわですが、“たのしい”にはかないません。
農薬漬けでない限り、目もよろこばせてくれる野菜もたのしみたいです。

そのほかトマトの歴史を探れば、いろいろな国で、たちまち人気の野菜になったため
その土地に適した品種をつくる必要が生じたそうです。
一般市場向けの品種はもちろんのこと、加工用の品種まで登場します。
加工用だと、さらにペースト用、ジュース用、缶詰用、粉末用と品種ですでに
細かくわけているようです。さらに、病気に強い品種改良にも力をそそぎました。
これが、1856年から盛んに おこなわれているというのですから、びっくりするほどの
種類があってあたりまえですね。

トマトはナス科で、学名はLycopersicum esculentum。
この学名にはトマトの昔話が潜んでいるのをご存じでしょうか。
“Lycopersicum”とは「オオカミの桃」の意。その昔、トマトは毒を持つ植物と
恐れられていました。同じナス科の有毒植物ベラドンナの実に似ていることなどが
誤解を招いてしまったようです。 野生のトマトはイチゴくらいの大きさしか
なかったといいます。インカの人々はコロンブスが新大陸を発見するずっと前から
トマトを栽培し、辛みのあるソースをつくりたべていたそうです。
トマトソースはインカ生まれだったのですね!?



 ●
 季節のコレクション
 



バジル畑
バジルはペーストをたくさんつくりたいから、買っている場合ではありません。たくさん、育ててどんどんつくって冷凍しておきます。つくりたては瓶詰めで売られているものにはないフレッシュさ。私がよくつくる配合は、バジルの葉100g、松の実大さじ3、オリーブオイル100cc、にんにく1かけ海塩小さじ1。チーズは好みで必要なときに料理の際に加えます。はじめから加えて保存するとチーズの質が落ちた感じのお味が気になってしまうのです。


フローレンスフェンネル
肥大した株をたべるタイプのフェンネルです。仙台ではなかなか売られていなし、東京では高級野菜だし(一株700円程)で、種を購入しました。りっぱなフヌイユのできあがり。さわやかな香りとセロリのような食感が大好き。ただの野菜サラダが一気に外国味になります。


ディルのたね
花が終わり、自然に枯れていくのを待っているあいだに たねはできあがっています。そして、もっと自然にまかせると、 いわゆる“こぼれだね”。たねは自分でこぼれて翌年また芽を出すのです。植物は生きているということを、たねはおしえてくれます。こんなに枯れているみたいなのに、また芽吹くのですから。


ビーツ
ビーツもフローレンスフェンネル同様どこでも売られている野菜ではありません。夫の父に育ててもらいました。 中は渦巻き模様の種類です。独特の土臭さが、あ、ビーツだという感じ。きっと成功だと思います。パリのビオ・マルシェで買ったビーツとはちょっとちがいました。でも、せっかく育ててくれた父にはそれは内緒。








2004.7.21

赤と黒の果実が同時についているのが
とてもかわいいブラックベリー。
お店にもときどき飾ってみましたが
やはり、熟した実は腐食してポロリと落ちて
テーブルやクロスを赤くしてしまうから、こりごり。

 


3 ● ブラックベリーのアーチ

夫の両親と、スープの冷めない距離に暮らしています。
冷めないどころか、注ぎたての熱いままを いただけるくらい。
母屋のすぐよこに私たち夫婦の小さな黄色い家があり、
別棟ではありますが、食事は母屋でとるのでいつでもいっしょ。
友達のようにおしゃべりしたり、おいしいものをつくってあげたり、
つくってもらったり、私はとてもめぐまれている お嫁さんです。

親子夫婦をつなぐ、勝手口と玄関のあいだには アーチがあります。
左からは、ブラックベリー。
右からは、ハニーサックル。
同じ年に植えたのですが、ハニーサックルのほうがぐんぐん、
あちらこちらに 伸び放題。好きなようにさせてあげていたせいか
右側はどうもアーチっぽくない。
出しゃばりさんみたいなハニーサックルに対して
しずかに、少しずつ成長しているブラックベリーを
ちょっと えこひいきしてしまいます。

ブラックベリーはバラ科の落葉低木。
ラズベリーやデューベリーとおなじく栽培(園芸)品種のひとつです。
原種ではありません。
野バラのような白い花のあと、アクセサリーにしたくなるもこもこの
フォルムが実りはじめます。
緑から赤、そして黒へと 色が変わっていく様を
アーチをくぐるたび気にします。
ブラックベリーはそのまままたべると とっても酸っぱい。
甘味のない酸っぱさが苦手な 私はいつもジャムにしています。

熟した実は腐食しやすいので すぐに摘まなければなりません。
でも、すべてが一度に黒く熟すのではなく、先尾のほうから順番に。
両手のひらに一杯が一日の収穫量。これでジャムをつくっても
スプーンでペロリとたべてしまえるくらいしかできあがらないので、
凍らせて ためておきます。収穫は3週間〜1ヶ月くらい続きます。
この時期、我が家の冷凍庫は
いちごジャムのつくりおきと、ジャムになるのを待つブラックベリーがぎっしり。

まだ、つくったことはないけれど
伝統的なお菓子にアップル&ブラックベリーパイというのがあり、
りんごとの相性がとってもよいそうです。
ほかの果実にくらべビタミンEが多く含まれているのも魅力です。

ハニーサックルもいま、美しいルビー色の実をつけていますが、
こちらは毒を持っているので気をつけないと。
うっかり口に運んでしまいそうな 美人のべりーです。






収穫量は このかご、3個分以上



2004.7.10
中;庭に実のなる木を植えるのは、やみつきになります
下;さっそくフレデリックパントリーのお菓子メニューは
プラムの田舎風タルト。幻のようになくなりました

 

2 ● メスレープラムの木

庭に育つ5年目のプラム。
たった5年で2階のデッキに豊富な枝をのぞかせるようになりました。
春先に白い花をたくさん咲かせて、豊作の予告。
家族そろって、収穫の日を待ちわびていました。

想像以上の大収穫の日。はしごをかけて、
はじめは大切に手摘みしていた夫ですが あまりにも時間が
かかりすぎることに気づき 途中から棒でつついて落とすことに。
ころころと転がるプラムを傷がつかないように
おいかけては拾う役を 担当しながら、
“手摘み”のたいへんさを考えていました。
フレデリックパントリーに並ぶオリーブオイルは
ほとんどが手摘みのものなのです。
少しだけ高価ですが、手摘みを体験するとそれでも安いという
価値観が生まれます。一粒、一粒、人の手で摘まれた
オリーブがおいしい絞り汁をわけてくれるのですから。

私は人と植物のどちらにも感謝できるたべものを
ほんものであると思っています。

安くて大量につくることができるオリーブオイルは
ちょっと乱暴な感じで機械が収穫し、機械生産されている場合が多く。
もちろん、農薬なども気にしない。
そういう「商品」でもいい日もあるけれど、とっておきのバゲットを
たべる日や、新鮮な野菜サラダでお客様をおもてなしする日、
シンプルなペペロンチーノがたべたい日は
人の手で丁寧につくられた「作品」のオイルにたよりたいです。


愛着あるこのプラムは中の果肉も真っ赤な“メスレー”という品種。
赤いタルトはとても美しくおいしいお菓子でした。
残りは、丸かじりしたり ジャムにしたり。
クレソンとプラムの冷たいスープも料理してみました。

3年目にはじめて実をつけて、5年目に大収穫。
まるで人生のよう。
フレデリックパントリーはこの秋、9月に3周年を迎えます。
ようやく実をつけるところです。



2004.7.7

花が咲きはじめた瞬間が摘みどき。
朝いちばんで外へ出たつもりなのに
いつも一匹のミツバチが先にいます。
どこかで私のラベンダーのはちみつをつくっているの?
ミツバチと競争しながら、せっせと一本一本
大切に摘み取ります

庭でよく育つのはラバンディン系の2株。
2株といっても300本は 収穫できます。
イングリッシュラベンダーはいつも
消えてしまいそうだし、そのほかの品種ももうひとつ。
石灰質の土壌が大好きなハーブですが
私はどちらかというと、あまり手を加えず
この土を気に入ってくれるのを待つほうです



今年はつくりそびれてしまったラベンダーボトル。
ラベンダースティックともいわれています。
乾いてしまうときれいに織り込めないので、
摘んでからすぐに編むことがうまくつくるコツ。
時間がない初夏を迎えてしまうと
つくれないのです。細かい作業が大好きな人に
おすすめしたいクラフトです。

1 ● ラベンダーの顔いろいろ

Lavender
[仏;lavande 独;lavendel]
鎮静、風邪、不眠、偏頭痛、神経症、消化機能の調和

古代ローマ時代から お風呂に浮かべて香りをまとったり、
香水や薬の香料として用いられてきたハーブです。
心を落ち着かせてくれる不思議な力を持っています。
ラテン語のlavare;洗うが語源。


なぜか、ラベンダーが「好き」とは言いたくないのです。
このハーブは、好きな花というより なくてはならないもの。

薬をのまなくなって10年ほどになります。
頭痛持ちだった私はいつも市販の頭痛薬がバッグに入っていたのですが、
いつのまにか ラベンダーの精油が常備品に。
頭が痛いときはこめかみに、火傷や虫さされにも、
ごく少量をおまじないのようにつけてみます。
風邪をひいたときは水で希釈してスプレーにしたものを
部屋にふりまき、家族にうつらないようにおまじない。
精製水で希釈して 自家製の化粧水に。
それをスプレー式の小さな容器に移し遠出のさいの必需品に。
新幹線の中での乾燥や、ホテルの部屋のにおいが気になるときに
重宝しています。そのまま化粧水になるわけですし。
摘み取った花は すぐにリボンで編みこむラベンダー・ボトルを
手作りしたり、花束を逆さに吊しドライにします。
どちらもクローゼットなどにしまうことで防虫剤となり、
いい香りもつけてくれます。
あまった茎も捨てずに麻ひもなどで束ねて冷蔵庫へ。
冷蔵庫のいやなにおいが、なくなります。

ここまでを生活の中に取り入れただけでも
いままであたりまえのように使っていたものが
なんだか必要のないものに思えてしまうことでしょう。
買うものが少なくなるはずです。
そんなふうに ふと心に思っただけでも
もう、シンプルでナチュラルな暮らしのはじまりです。

フランスで購入したエルブ・ド・プロヴァンスには
ラベンダーもミックスされていました。
もともと、このハーブミックスは“プロバンスのハーブ
”という名の
とおり、その地域の緑を刈り取って自然にミックスされたもの。
商品化された現在は人がブレンドしているようですが。
それなら、ラベンダーも入っていて当然ね!と思ったのですが、
日本に紹介されているエルブ・ド・プロヴァンスには
入っていないことが多いようです。
たしかに、ラべンダーが入ることで香りは独特のものになります。


注意:ラベンダーの精油はとくべつに少量、直接 肌につけてもよいとされる
ハーブです。ほかの精油の原液はつけないよう気をつけてください。

 

文 : 岩佐ゆみ


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